今日、みみかきなる生き物が我が家にやってくる。 言われるままにFAXを送ったものの、あれだけで本当に大丈夫なのか。そもそもどうやってうちまで来るのだろうか。
ピンポーン。「宅急便でーす」
品名「みみかき(ワレモノ)」。どうやら宅急便で来たようだ。ちょっと意外だ。ていうかワレモノなのか。
はいはい、ここにサインね。ごくろうさまですー。
「ふぅん、なかなかええマンションやないの」
振り返ると、携帯片手にじろじろと部屋を見回す得体の知れない生物。
ええと?もしかして君がみみかき?いつのまに?ていうか宅急便で来たのでは?
いやそれより何よりしゃべった?
「きゅぅん?」
空耳か・・・しゃべるはずないもんな。鳴き声がそう聞こえたんだろう。
鳴き声カワイイなぁ。なによりその外見!珍獣好きの僕のハートをガッチリわしづかみだ。
じゃあこれは荷物だけ宅急便で送ったんだな。よし、開けてやろう。それにしても厳重な包装だ。
やっと出てきた小包の中身はリュックを背負った・・・みみかき?ど、どういうことだ?
だってみみかきはほら、僕の横に・・・いない。
そして小包の中から僕に手紙を差し出すみみかき。
「ドッキリ大成功☆」
そんな僕とみみかきとの出会い。
僕はみみかき用に「住まい」を用意したことを伝えた。
「!」全身で喜びを表現しているように見えるみみかき。
みみかき、これが君の部屋だよ。
そう言って僕が持ってきたのは新聞を敷いたダンボール箱。
「・・・」全身で不満を表現しているように見えるみみかき。
嫌かい?うーん・・・あっそうだ、大事なことを忘れてた。
そう言って僕は油性マジックを取り出し、ダンボールに「みみかきの部屋」と書いた。
「・・・」全身で「そうじゃねえだろ馬鹿」と表現しているように見えるみみかき。
次の瞬間、素早くマジックを取り上げたかと思うと、 ダンボールの「みみかき」を線で消し、「はらぽん」と書き足すみみかき。 はっはっはこれじゃまるで僕がペットみたいだちょっと待てコラ。
さらにマジックで僕の額に「肉」と書いたみみかきと大乱闘。 これからうまくやっていけるか不安になった。
ナイター中継(阪神戦)一緒に見てるうちに意気投合。
阪神負けて二人(二人?)でヤケ酒。
なんだかそわそわしているように見えるみみかき。ひょっとしてトイレかな。 ふふ、みみかきのトイレ用にちゃんとプラスチック容器を用意・・・ おーい、そこは人間用トイレだぞ。「バタン、ガチャ」無視して入ってしまった。
大丈夫なんだろうか。一緒に流されたりしないか心配だ。 「♪」お、出てきた・・・ってずいぶん縮んだような気が。 よっぽどため込んでいたのかもしれない。確実にひとまわりは小さくなっている。
後から僕がトイレに行った時目にしたものは、三角に折られたトイレットペーパー。
みみかきを散歩に連れていった。マンション前の線路沿いをてくてく歩く。 みみかきもちょこちょこ歩く。見え隠れするどう見ても鳥のような脚。 部屋にいる時はどう考えてもなかった気がする謎の脚。ちょこちょこ歩く。
不安定な空模様。とうとう降り出した。傘持っていないし、そろそろ戻るとするか。 その時「パン、パン」と爆竹を鳴らすような音が聞こえて、慌ててみみかきを見ると、 雨粒に当たるたびに小爆発を起こしている。すでに随分変形している。うわあああああ。
みみかきを抱えて猛ダッシュで帰宅。
先日の爆発でへこんだ部分が元に戻らないので、プラモデル用のパテで埋めておいた。 色合いもぴったりだし、いい感じだ。
みみかきがうちにやってくるのとほぼ同時に仕事が忙しくなり、 帰りが遅いこともしょっちゅうで、なかなか相手してやれない日が続く。 寂しい思いをさせてはいまいかと心苦しい。
今日も家に着いたのは日付が変わってから。 ただいまー、と玄関から言うと何やらバタバタガチャガチャ。 部屋のドアを開けると、口笛吹いて必死で平静を装っているように見えるみみかき。
超不自然。
すやすやと昼寝中のみみかき。 僕の外出中にみみかきが部屋で何をしているのか非常に気になるので、 仕事休みの今日、部屋のすみずみまで調べたけれどこれといって変化はなかった。 エロ漫画、エロビデオの類も無事だった。
人のものを勝手にいじってるんじゃないかと疑ってしまった自分が恥ずかしい。 ごめんなと囁いて気持ち良さそうに眠るみみかきを2,3度撫でた。
さて、特に予定もないし、久々にガンダムのプラモデルでも作ろうか。 これこれ、随分前に作りかけだったやつ・・・か、完成してる? こっちのプラモも!買ったばかりの高かったこのプラモまで! よく見たら塗料がめちゃめちゃ減ってる!
急激に芽生えるみみかきへの殺意。
新しいプラモデルをみみかきと一緒に作ることにした。 みみかきの工作・塗装能力はもはやプロ並み。いったい何処で覚えたのやら。 様々なテクニックを伝授してもらった充実の休日。
みみかきと麻雀ゲームで対戦。 「きゅうん!」え、ロン?ええと、ハツ・ホンイツ・・・じゃなくて・・・えええええ!?緑一色(リューイーソー)!? 役満(一番点数の高い種類の役)!?
いや、体色まで緑一色にしなくていいから。なんかムカつく。
携帯電話をいじる時のみみかきはいつも非常に熱心。 丁度メールが届いたらしく、メール着信音はMr.マリックのテーマ。 思わず「ぷっ」と吹き出したら憤慨したように見えるみみかき。 Mr.マリックの偉大さをジェスチャーで小一時間説明されたが、 さっぱり分からなかった。
みみかきが寝返りをうった時にお腹に見えたのは 「最小化」「最大化」「閉じる」の3つのボタン。
どれも怖くて押せない。
ただいまー。ああ、今日もバイト疲れた。 「きゅうんー。」え、布団?干しておいてくれたの? み・・・みみかき・・・お前ってやつは・・・(感動)
「きゅうんー。」え、おやすみって・・・それ僕の布団・・・。 みみかきが指す方向を見ると「はらぽんのふとん」と書いた新聞紙。
ああなるほどね、自分が気持ちよく寝るために布団干したんだねブッコロス。
みみかきがみみかきでみみかきをしていた。
みみかきははたしてみみかきがうまいのだろうか。ふと気になり、みみかきにお願いしてみた。 「きゅうーん!」どうやら快くひきうけてくれたように見えるので、 僕は横になった。じゃあ左耳からよろしくー。
あれ?僕の目の前にみみかきが転がってるけど、これ使わないのかなあ。 「ガッシャ、ガッシャ・・・ウィィィィン・・・キュルルルル」 ちょちょちょっとタンマ。なんだ今の機械音。何が始まるんだ一体。
命の危険を感じたのでみみかきをしてもらうのはやめておいた。
みみかきのみみかきをしてあげようと思ったけど、 耳垢がまったく見当たらなかった。いや、そもそもここは本当に耳なのか。
みみかきを僕のバイト先であるいきいき活動の教室に連れて行った。 たちまち子供たちに囲まれるみみかき。大人気だ。 ただし数人は異様におびえている。
外で子供と遊んでしばらくして戻ってくると、みみかきの身体がずいぶんと縮んだような・・・? よく見ると、まわりの子供がみみかきの身体をちぎっては破片を指で練っている。 ねり消し扱い。
今日もみみかきと一緒にいきいき活動のバイトに来た。 子供と一緒に楽しそうに遊ぶみみかき。 普段僕が遊んでやれないからいいストレス解消になるだろう。 一緒に遊ぶというより遊び道具にされてるように見えるが。 みみかきでドッジボールとかしてるし。
さて、子供も皆お迎えが来たし僕らも帰ろうか、みみかき。 ・・・あれ?これは・・・ドッジボール。
その後、ボールのカゴの底で身動きが取れなくなっているみみかきを発見。
台風接近に伴い大きくなってきたみみかき。大自然の力と共鳴しているのだろうか。 みるみる部屋の半分ぐらいにまで成長したので僕の寝る場所が無い。
大きくなったみみかきはひんやりして気持ち良かったので、抱いて寝ることにした。 蒸し暑い夜にはもってこいだ。
翌朝、みみかきは元の大きさに戻っていた。つくづく不思議な生物だ。
みみかきとコンビニへ。何かお菓子を買ってやろう。お、いちご大福。ちょうど2個あるしこれを買うか。 「きゅうーん♪」みみかきも喜んでいるように見える。
いちご大福を手に取る。ふにゅっという感触。どうも中身のいちごが無さそうだ。もう1個も。 もしやと思いみみかきを見ると、口をもぐもぐさせている。こらっ、買う前に食べちゃ駄目だろう。 まったく油断もスキもない。すいませーん、このいちご大福2つください。
包みも開けずにみみかきがどうやっていちごを食べたのかという事はもはや気にしなくなっていた。
みみかきがまた熱心に昆虫図鑑を見ている。どうも違うような気がしてならない。 地球上にはもっといろんな種類の生物がいるのである。 そうだ、インターネットで調べてみようか。 僕もみみかきの正体については非常に興味があるし。
「きゅうーん!」お、仲間がみつかったか? どれどれ・・・ええと、このサイトで扱ってるのは・・・目黒寄生虫館。
そっちか。そっちなのか。
今日も熱心にパソコンに向かうみみかき。 また何か生物関係のサイトでも見ているのかと思ったら 「mimikaki.jp」というドメインを取得しようとしていたので全力で阻止した。 料金支払いは僕のクレジットになっていたからたまらない。
ちょっと見てみたい気もするけど。mimikaki.jpを。
今日も深夜にバイトから帰宅すると、部屋では宴会の準備が。 どうやらみみかきが僕の就職を祝ってくれるみたいだ。 これには感激してちょっと泣いた。
乾杯!僕はビール、みみかきは・・・その透明な液体は何? 「きゅーん♪」ま、まてまて、それはプラモデル用接着剤! がぶがぶ飲んでいるみみかき。しかも酔ってる。 まあいいか。今夜は無礼講だ。
明け方までみみかきと飲み明かした。
みみかきに元気がない。どうやら二日酔いのようだ。 とりあえず胃腸薬を飲ませておいたが効果があるのだろうか。 接着剤で二日酔いならプラモデル塗装用シンナーなんかで治ったりするのだろうか。
みみかきは内臓も不思議がいっぱい。
昨夜はバイト仲間と宴会。見事に二日酔いになった。 布団で苦しむ僕にみみかきが差し出してくれたのは・・・プラモデル塗料用シンナー。 やっぱりそれ、二日酔いにきくんだ。 でも僕にはきかないと思うし別方向にいろいろヤバそうだということをみみかきに説明した。 人間の身体はよくわからないなあ、というようなリアクションをされた。
お前の身体の方がよっぽどよくわからん。
みみかきの背中のファスナーからサラサラのいい香りのする長髪がはみ出していた。 昨日までは無かった気がするんだけど、あんなファスナー。
一緒に風呂に入ろうと言うといつも怒るみみかき。 また、風呂に入ってる時は絶対に近寄らないように念を押された。
不思議に思っていたのだが、ある日こっそりのぞいてみると、 ドアに映ったそのシルエットは・・・どう見ても人間の女性!? (しかもボン・キュッ・ボン)
「はらぽん・・・好き・・・」 み、みみかきっ!たまらず抱きしめたらそれはダッチワイフだった。 うーん・・・夢か。もしかして昨日の風呂で見たのもこいつ・・・? よく見るとダッチワイフの口に手紙が挟まっていた。
「はらぽんへ。就職決まったんだし早くいい女探せ。 それまでは私のプレゼントしたダッチワイフで我慢しろ。 私はこれからこの人の所へ行く。 今日はたまの休みなんだからゆっくり休め。身体はいたわれ。みみかき」
どうやらみみかきは次の飼い主を見つけたようだ。 久しぶりに何の予定もない休日だったので、めいっぱいみみかきと遊ぼうと思っていたのに。 僕の全身を脱力感と寂しさが包む。こんなにも突然去っていくなんて。
みみかきがやってきてからバイトでとても忙しい日々が続き、 ろくに相手をしてやれなかったのが心残りでならない。 僕は、ハードな日々も家に帰るとみみかきがいたから頑張れたというのに。 一緒に生活していても謎は深まるばかりだったが、心は通じ合えた気がする。
1ヶ月間、本当に楽しかった。ありがとう、みみかき。