サンカ


迎春

君が死んで、2年目の春が来た。

あれは確か、アルバイトの休憩中。
携帯に後輩からの着信履歴と、メール。
メールを開いて僕の目に飛び込んできた信じ難い文。
「Yちゃんが亡くなったそうです」

Yとは、高校の後輩であり、僕の初めての彼女。
遠距離恋愛は長くは続かなかったが、
別れてしばらく経ったある日、突然電話がかかってきてから、
二人の間に新しい関係が生まれた。

おかしな話、付き合っていた時より心を開いていたかもしれない。
それぞれ愛する人が別にいたし、頻繁に連絡をすることはなかった。
ただ、年賀状だけは毎年届くようになった。
ウサギ・タツ・ヘビ・・・下手なイラストが愛らしかった。

偶然僕のサイトを見つけたといって、メールのやりとりもした。
ホームページが作りたいというので、アドバイスもした。
翌年にはウマの絵の年賀状が届いた。やはり絵は下手なまま。
次の年も、同じような下手なヒツジの年賀状が届くものと思ってた。

何かの間違いであってほしかった。

すぐに後輩に電話した。
白血病。最期は眠るように息を引き取ったらしい。
そういえば以前、入院していたと聞いたことはあったけど、
病気のことなんて何ひとつ知らなかった。

衝撃と、動揺と。感情は形にならず、言葉に出来ず。
口を開いても出てくるのは「嘘だろ・・・」ぐらい。
親戚以外の身近な人が死ぬこと自体、初めての経験。
どうして。
なぜ。
問いかけは、虚しく宙に消えるばかりだった。

今、もらった年賀状を全部並べている。
時間が流れても実感は全くないんだけど、
年賀状はやっぱりウマの絵までしかなくて、
今年もサルの年賀状は届かないまま、
君が死んで、2年目の春が来た。

参加企画:漸雑文祭


haraponet - since 2001.09.30 - produced by harapon