「7月7日、晴れ」
7月という季節を感じさせる日差しは、
近くのコインランドリーまでのわずかな道のりでも汗をかかせる。
久しぶりの天気だなあ、と頭の中でつぶやいた。
昨日探していた漫画は、別の本屋であっさり見つかった。
洗濯の合間にBGMを流して読みふける。
まるで用意された演出のように、漫画とCDの曲がシンクロし、
不意にこぼれそうになる涙をこらえた。
―失うことにおびえながら 少しずつ失っていくんだ
―
気付けば、屋上にいた。
うちのマンションは無用心なのか気前がいいのか、
屋上へ自由に上がることができる。
ええと、これがベガかな・・・だとしたらあれはアルタイル?
いやいや、あの色は木星だろう。
夏の大三角すらおぼつかなかったのは、
まだうっすら明るい空と少し多い雲のせいか、やたらまぶしい半月のせいか。
それとも、しばらく観測に行っていない僕自身の衰えなのか。
10年以上も星空を見てきたというのに。
七夕に晴れ間がのぞくことがここ最近では随分珍しいように感じる。
ぼんやりと、いろんな人のことを考えていた。
皆、元気でいるだろうか。
あの子が僕の元を去ってからもうすぐ2年。
毎晩気が狂いそうに辛かったあの頃が嘘のよう。こんなにも忘れていくんだな。
傷口に触れれば、今でもかすかに痛むけど。
新しい恋がしたい、と思っても、
情けないくらい恋愛に対して臆病になっている自分がいる。
じっと膝を抱えて、誰かがそっと背中を押してくれるのを待つばかり。
きっかけなんて自分で作らなきゃ何も始まらないと分かっていながら。
傷つけたくないから、なんて、
傷つきたくないのは自分。
織姫と彦星を探すのは途中でやめた。
もし見つけてしまったところで、他人の恋なんてうらやましくなるだけだから。
僕は僕の愛すべき人を、天の川の対岸に見つけよう。
そして流れの強さなんて言い訳にせずに、そばに行こう。
そして一言だけ言おう。
「好きだ」
星空も束の間、夜中には雨粒が落ちていた。
梅雨は、まだ明けない。
―会いたくて 会いたくて 会えなくて
―
2003年07月07日の心色より