ココロ


セツナ

束の間の春の陽気が去り
2月らしい寒さが舞い戻った昼下がり
自転車で信号待ちをする貴方を僕は見つけました

いや 貴方が先に僕を見つけましたね
後から僕が気付いて
風が強くて 髪をなびかせながら
貴方は僕に笑顔で手を振りましたね

車も人もたくさん通る大きな道でしたが
その刹那 世界には僕と貴方だけになったのです
それは錯覚であり 願望でもあり

この日この時この場所で貴方とこうして出会ったこと
それは単なる偶然 それ以外の何でもありません
しかし それが起こる確率を考えたとき
そして 僕がそれによって得られた喜びに満たされたとき
偶然は素晴らしい奇跡となります

にもかかわらず
貴方への想いを微かにも形に出来ない僕は
照れながら手を振り返すのが精一杯で
自転車で走る僕から 貴方はみるみる遠ざかっていきます

このまま時が経てば 貴方に二度と会うこともなくなりそうで
そうすれば貴方は たちまち僕のことなど忘れそうで
それでも僕には どうすることも出来なくて
たとえ貴方が僕の手を握ってくれたとしても
きっと僕は 握り返すことなど出来なくて

そんな ほんの数秒の出来事に
儚い気持ちは 冷たい風に吹き飛ばされ
春はまだ 遥か彼方

2004年02月24日の心色より


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