ココロ


わかっていたのに。

約1年ぶりに、彼女の顔をマトモに見たときに、すでに答えは出ていた。
時間を重ね、当たり障りのない会話を続けるうちに、それはほぼ確信になっていた。

なのに。
試合時間の半分程度もの時間をかけてようやく抜け出した人ごみ。
そこでジュースを飲んだあとに、絶望を込めた問いかけ。

「また会えるかな?」

かつて僕の人生において、これほどまでに答えの分かりきった問いがあっただろうか?
「そばにいてほしい。」それでも僕は、言葉を続けた。
もうよせよ、これ以上何を言っても意味無いぞ・・・
ともう一人の自分に必死で止められながら。
そしてしばしおとずれる重い沈黙。

やり直す気は全然ない

・・・その言葉を待っていた。
答えはそれしかない。本当におかしな話だが、僕はそれを分かっていた。
もっと必死で、すがりつくように訴えていれば、結果は違っただろうか?
いや、はじめから答えはひとつだった。

「ごめんな、こんな時にこんなこと言って。」
自分の発言をごまかすためのフォローじゃなく、本当に謝りたくてそう言った。
せっかくのW杯観戦を、めちゃくちゃ後味悪くしてしまったことが、申し訳なくて。
本当に、本当に申し訳なくて。
でも、こうまでしても、今日は言わずには終われなかったとも思う。
日を改めて・・・というわけにいかないから。

こうして、「決戦の金曜日」は幕を閉じた。
思えば、デキレースだったのかも。
僕はといえば、悲しみとかよりも、呪縛からの解放というか、
これでようやく、本当にようやく全てが終わったんだなぁ、と。

2002年6月14日の心色より


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