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fast food text party(ファーストフードテキストパーティー)


ハンバーガー、単品でひとつ

「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ」

「ハンバーガー、単品でひとつお願いします」

「かしこまりました。少々お待ちください」

「なんか、客、いないね」

「そりゃあもう、開店前でございますから」

「開店前? 開店前なのに、僕が入ってもいいのですか」

「ええ、かまいませんよ。そこのお席でお待ちください。このコーラはサービスです」

「どうもありがとう。って、何でついてくるのですか。何故 僕の横に座って」

「ところでお客様、お客様はどのようにしてこのお店にいらっしゃったのですか」

「え? なんか、美味しいファーストフードがあるって友達の肉屋さんから聞いたから来たんですけど」

「そうですか。そうですね。そうでしょうとも」

「なんなんですか」

「当店のハンバーガーはとても美味しいですよ。なんたって材料が違いますからねえ」

「和牛でも使ってるんですか」

「まあ、似たようなものです。ところで、お客様、お客様がご紹介を受けた肉屋さんというのは、もしかして松田精肉店の松田さんですか」

「ああ、そうです。なんだ、知ってるんですか。もしかして松田さんが卸してるお肉なんですか」

「松田さんだけではありませんが、確かに松田さんも当店に新鮮な肉を提供してくださいます。当店といたしましても、松田さんには非常に感謝しております。何しろ、当店で扱う肉は、大変 入手しにくいものですからねえ。

お客様、お客様、おや、ようやく効いてきたようですねえ。お客様のご注文になったハンバーガーは あいにくとお客様ご自身が召し上がることはありませんが、お客様ご自身がお肉になるのですから、大した違いはありませんよねえ。・・・それにしても、松田さんは美味しそうな人間を見分けるのが得意でいらっしゃいます。さすが卸売りのベテランは違います。

お客様、お客様  ああ、もう聞こえていませんね。それでは 当店のご利用と食材の提供、まことにありがとうございました・・・」